イチゴの栽培Q&A・解説
イチゴはバラ科に分類される野菜です。このページでは、イチゴに関する全20問を、正解と解説つきの一問一答で整理しています。土壌・施肥管理・播種・育苗・整枝・仕立て・かん水・養水分管理・病害対策など、栽培の現場や検定対策で役立つ知識を、読み物として確認できます。
イチゴとは — 栽培の基礎知識
イチゴはバラ科の多年草で、現在栽培される品種はオランダで交配された大果性の種を基礎としています。日本は世界有数のイチゴ消費・育種国で、各地のオリジナル品種がしのぎを削っています。私たちが果実として食べる部分は花托が肥大した偽果で、本当の果実は表面のつぶつぶ(痩果)です。
イチゴは花芽分化に低温と短日が関わる作物で、この性質を利用して育苗期の温度管理や、電照・夜冷などで花芽を制御する高度な作型が発達しています。ランナー(ほふく茎)で子株を増やして苗をつくり、クラウン(株の芯)を埋めないよう浅植えにするのが定植の基本です。
うどんこ病・炭疽病・灰色カビ病や、ハダニ・アブラムシ・ヨトウムシなどが主な障害で、施設栽培では天敵やミツバチによる受粉利用も一般的です。以下のQ&Aで、育苗・花芽分化・定植・病害虫・受粉まで、イチゴ栽培の要点を学べます。
土壌・施肥管理
Q1.イチゴの栽培に適した土壌pHはどれですか。
- pH 4.0〜5.0
- pH 5.5〜6.5
- pH 7.5〜8.0
- pH 8.5〜9.0
解説イチゴの適正土壌pHはpH 5.5〜6.5の弱酸性です。酸性が強すぎると根の活性が低下し、カルシウム・マグネシウムの吸収も阻害されます。定植前の土壌診断と石灰施用によるpH矯正が重要です。
Q2.イチゴの施設栽培で土壌に「塩類集積」が起きやすい理由と対策として正しいのはどれですか。
- 雨が当たらないため施肥由来の塩類が集積しやすく、灌水・天地返し・緑肥等で解消する
- イチゴの根が塩類を土壌に排出するため対策として輪作で根を除去する必要がある
- 塩類集積はpHを下げる効果があり、好酸性のイチゴには有益な現象
- 塩類集積は有機肥料を増量施用することで土壌微生物が分解して解消できる
解説ハウス栽培では雨による塩類の溶脱がないため、施肥由来の無機塩類が土壌表層に蓄積します(塩類集積)。塩類集積は根の吸水阻害・生育不良を引き起こします。大量灌水による塩類の溶脱・天地返し・緑肥のすき込みが解消策です。
播種・育苗
Q3.イチゴの苗増殖で利用する「ランナー」について正しい説明はどれですか。
- ランナーとは種子のことで毎年収穫後に採種して翌年の苗を育てる
- 親株から伸びる長い匍匐茎(ほふくけい)で、その先端の子株を採苗して翌年の栽培苗とする
- ランナーとは根茎(地下茎)のことで、掘り起こして複数に分割して増殖する
- ランナーはハダニの食害によって生じる蔓状の組織変化
解説イチゴは収穫後に親株から「ランナー(匍匐茎)」と呼ばれる細い茎が地面を這って伸び、その先端に子株が形成されます。この子株を採苗・育苗することで毎年の栽培苗を確保します。ウイルスフリーの優良苗を利用することが品質確保の基本です。
Q4.イチゴの「夜冷育苗(やれいいくびょう)」を行う主な目的はどれですか。
- 夜間冷却によって苗を矮小化させることで定植時の深植えを防ぐため
- 夜間に低温処理して花芽分化を促進し、定植後の早期開花・収穫を可能にするため
- 夜冷によって苗に付着した病害虫を低温で死滅・不活化させるため
- 夜冷によって根を低温にさらして活着能力を最大化させるため
解説イチゴの花芽分化には短日(日長13時間以下)と低温(17〜20℃以下)の組み合わせが必要です。夜冷育苗は夜間に苗を冷蔵コンテナ(約13〜15℃)に入れることで人工的に低温・短日環境を作り出し、花芽分化を促進して早期収穫を実現します。
整枝・仕立て
Q5.イチゴ栽培で「ランナー・古葉の除去(摘葉)」を行う主な目的はどれですか。
- 株全体の葉数を意図的に減らすことで果実への光の当たりを均等にするため
- 古い葉や地面を這うランナーを除去して通風・採光を改善し、病害発生と養分の無駄遣いを防ぐため
- 摘葉によって根への炭素源供給を増加させてクラウン(生長点)の充実を促すため
- 摘葉することで果実が大きくなるというホルモン応答が誘導されるため
解説古葉は病害(灰色カビ病・うどんこ病)の感染源になりやすく、ランナーは余分な養分を消費します。定期的な摘葉とランナー除去で通風・採光が改善され、株の充実と病害抑制につながります。有効な葉(緑色で展開した葉)は残します。
かん水・養水分管理
Q6.イチゴの施設栽培で「点滴かん水(ドリップかん水)」と「液肥施用(かん水施肥)」を組み合わせる主な利点はどれですか。
- 大量の水を一度に株元に施用することで深部の根まで十分に届けるため
- 根圏への均一な水・肥料供給が可能で、葉・花への水はねがなく病害リスクを低減できる
- かん水施肥はポンプ費用が不要なため大幅なコスト削減が期待できるため
- かん水と同時に農薬を施用することで自動的に害虫も駆除できるため
解説点滴かん水は根圏のみに少量頻回で水と肥料を供給するため、葉・花・果実への水はねがなく灰色カビ病等の病害リスクを大幅に低減できます。肥料利用効率も高く、生育ステージに合わせた緻密な施肥管理が可能です。
病害対策
Q7.イチゴ栽培で最も多発する病害「うどんこ病」の特徴はどれですか。
- 根の導管に侵入して養水分の移行を阻害し、地上部が急速に萎凋する
- 葉・花・果実に白い粉状のカビが生じ、果実の商品価値が著しく低下する
- 根が黒変・腐敗して株全体が徐々に枯死していく
- 茎の地際が腐敗して株が根元から折れて倒伏する
解説うどんこ病(Podosphaera aphanis)はイチゴの最重要病害で、白い粉状のカビが葉面・花・果実に広がります。果実が奇形・食味低下し、商品価値が著しく損なわれます。施設内の換気による低湿度維持と早期発見・防除が重要です。
Q8.イチゴの「灰色カビ病(ボトリチス病)」が多発しやすい環境はどれですか。
- 高温乾燥期の真夏で施設内の温度が35℃以上になる条件
- 低温・高湿度・密植・換気不足の条件(花弁や枯れ葉から感染が始まる)
- 強日射の晴れ渡った日が長期間続いてうどんこ病との複合感染が起きる条件
- 砂地の排水良好な圃場で過乾燥が続く条件
解説灰色カビ病(Botrytis cinerea)はイチゴの花・果実・葉に灰色のカビが生じる病害で、低温・高湿度・換気不足の施設内で爆発的に発生します。枯れ花(花弁)が最初の感染源になりやすいため、開花後の枯れ花除去(花かき)が重要な予防策です。
害虫対策
Q9.イチゴ栽培で特に問題になる「ハダニ(二点ハダニ等)」の被害と防除法として正しいのはどれですか。
- 葉を大きく食い荒らして穴を開ける害虫で殺虫剤への感受性が高く防除が容易
- 葉裏から吸汁して白いかすり傷を生じさせ、殺ダニ剤への抵抗性を得やすいため天敵(チリカブリダニ等)の導入が効果的
- 根を食害して株全体の吸水能力を低下させる土壌害虫
- 果実の表皮内部に産卵して幼虫が胎座組織を食害し腐敗させる
解説ハダニ(二点ハダニ・カンザワハダニ等)は葉裏で吸汁してかすり傷被害を与えます。殺ダニ剤への抵抗性をすぐに獲得するため薬剤ローテーションが必要で、近年は天敵のチリカブリダニ等の生物農薬が施設栽培で広く活用されています。
収穫・品質管理
Q10.イチゴの収穫適期として最も正しい目安はどれですか。
- 果実が品種の最大重量に達した時点が最高品質の収穫適期
- 果実全体が均一に赤く着色し、ヘタの周辺まで色が回った状態で果皮に張りとツヤがあるとき
- ヘタが枯れ・褐変し始めて果実が完全に軟化した時点で収穫する
- 開花から計算して必ず45日後に収穫する
解説イチゴはヘタの周辺まで均一に着色し、果皮に張りとツヤがある状態が収穫適期です。完熟に近いほど甘みと香りが強くなります。直売・農園では完熟収穫が可能ですが、市場出荷では流通中の過熟防止のため8〜9分着色で収穫することが多いです。
Q11.収穫したイチゴの鮮度保持で最も重要な管理はどれですか。
- 収穫後に常温(25℃)で保管して果実の追熟を進めることが食味向上に有効
- 収穫直後の予冷と0〜3℃・高湿度での低温管理
- 収穫後にすぐに水洗いして表面の雑菌と農薬残留を除去してから保存する
- できるだけ重ねてコンパクトに積み重ねてスペースを節約して保存する
解説イチゴは非常に繊細で収穫後の品質低下が速い果実です。収穫後すぐに予冷して0〜3℃に冷やし、高湿度(90〜95%)で保管することが鮮度保持の基本です。衝撃・圧迫・高温にも弱いため、取り扱いには細心の注意が必要です。
温度・環境管理
Q12.施設イチゴ栽培で「電照(補光)」を行う主な目的はどれですか。
- 電照によってハダニ・アザミウマを夜間に誘引して捕虫トラップに集めるため
- 冬の短日条件下での株の休眠打破・頂花房の発育促進と収穫の安定化のため
- 電照の光が果実のアントシアニン合成を刺激して着色を早めるため
- 電照によってうどんこ病菌の胞子に紫外線が当たって不活化されるため
解説イチゴは一定の低温に当たると休眠し、休眠覚醒後に花房の発育が始まります。電照(白熱灯等による夜間補光)で日長を長日に操作することで休眠を打破・抑制し、頂花房の発育を促進して収穫時期を安定させます。促成栽培の重要な技術です。
Q13.イチゴの「クラウン(生長点)」の管理として正しいのはどれですか。
- クラウンを土中深く埋めることで低温と保湿効果が高まり活着が安定する
- クラウン(株の根元の成長点部分)を地表に出した状態で定植し、埋めすぎると腐敗・生育不良になる
- クラウンは収穫後に切り取る株の基部で翌年の更新用組織である
- クラウンは病害虫が好んで集まる部位なので露出させないほうがよい
解説イチゴのクラウンは葉・花序・ランナーを生じる株の核心部分です。定植時にクラウンを深く土中に埋めると腐敗・生育不良が起きます。クラウン部分が地表に出る深さで植えることが活着・生育のポイントです。
植物生理・基礎
Q14.イチゴの花芽分化に必要な環境条件として正しいのはどれですか。
- 高温(28℃以上)と長日の組み合わせ
- 低温(17〜20℃以下)と短日(日長13時間以下)の組み合わせ
- 高温(28℃以上)と短日の組み合わせ
- 低温(5℃以下)と長日の組み合わせ
解説イチゴの花芽分化は低温(品種にもよるが概ね17〜20℃以下)と短日(日長13時間以下)の組み合わせで促進されます。どちらか一方だけでも誘導されることがあります。夜冷育苗はこの原理を利用して人工的に花芽分化を早める技術です。
Q15.イチゴが「休眠」に入る条件と休眠覚醒(打破)の方法として正しいのはどれですか。
- 水分不足のストレスで休眠に入り、十分なかん水を再開すると覚醒する
- 低温と短日が続くと休眠に入り、温度上昇・長日または低温積算量の充足で覚醒する
- 高温期に休眠に入り、温度が低下することで覚醒する
- 窒素・リン酸不足で休眠に入り、施肥によって代謝が再開して覚醒する
解説イチゴは秋の低温・短日条件で休眠に入り、クラウンが収縮して生育が止まります。一定の低温積算量(品種によって異なる)が蓄積されると休眠が覚醒します。促成栽培では電照・加温で休眠覚醒後の生育を促し、早期収穫を図ります。
農業気象
Q16.2月ごろの低温がイチゴの収穫に与える影響として正しいのはどれですか。
- 低温によって果実のアントシアニン合成が促進されて着色が深まり収穫量が増える
- 花粉の活性低下による受精不良で奇形果が増加し、低温が続くと果実肥大が停滞する
- 低温で株全体が休眠から深休眠へ移行してランナー生産に切り替わる
- 低温でハダニ・アザミウマが死滅して病害虫被害が一時的になくなる
解説2月の低温期はイチゴの収穫量が落ちる「端境期」です。低温で花粉の稔性が低下して受精不良による奇形果が増え、果実の肥大速度も落ちます。施設内の暖房管理と温湯処理・ミツバチ等による確実な受粉が品質・収量の維持に重要です。
有機農業・環境保全
Q17.有機農業でのイチゴのハダニ対策として最も有効な生物農薬はどれですか。
- 化学合成殺ダニ剤(ビフェナゼート・ミルベメクチン等の農薬製剤)
- 天敵昆虫チリカブリダニ(捕食性ダニ)の施設内への放飼
- ネオニコチノイド系農薬(アセタミプリド等の化学合成農薬)
- マシン油乳剤(石油系の展着剤を主成分とする農薬)
解説チリカブリダニ(Phytoseiulus persimilis)はハダニを専食する天敵ダニで、イチゴのハダニ防除に有機農業でも利用できる生物農薬として広く普及しています。ミヤコカブリダニなど他の天敵ダニとの使い分けも重要です。
Q18.有機農業でのイチゴのうどんこ病対策として適切なのはどれですか。
- 化学合成殺菌剤(フルジオキソニル・シプロジニル等)を定期的に予防散布する
- 施設内の換気による湿度管理・重曹水溶液や硫黄製剤の活用・耐病性品種の選択
- 除草剤で圃場周辺の草をすべて除去して病原菌の一次感染源を根絶する
- 化学肥料を増量施用して株を強化することで自然抵抗性を向上させる
解説有機農業では化学合成殺菌剤が使えないため、施設内の換気で過湿を防ぐ・重曹(炭酸水素ナトリウム)水溶液の散布・硫黄製剤の利用・うどんこ病に強い品種の選択を組み合わせます。発生初期の早期対応が最重要です。
流通・販売
Q19.イチゴの品種「とちおとめ」「あまおう」「さちのか」などが地域によって異なる主な理由はどれですか。
- 地域によって気候・気温が違うため同一品種では生育が不可能になるため
- 各都道府県の農業試験場・大学が地域の気候・栽培条件・市場ニーズに合わせて独自に育種・登録した品種があるため
- 品種の違いは外観・形だけで食味や栽培適性はすべての品種で同一のため
- 生産者が個人の好みで自由に品種を選択しているだけで地域性はないため
解説日本では各都道府県が独自の育種・登録を行い、地域の気候・栽培条件・消費者の好みに合った品種を開発しています。とちおとめ(栃木)、あまおう(福岡)、さちのか(農研機構)など、地域ブランド品種が産地の差別化に大きく貢献しています。
Q20.イチゴの「高設栽培(たかしきさいばい)」が普及した主な理由はどれですか。
- 高設栽培では果実に直射日光が均等に当たるため着色が2倍以上改善されるため
- 腰をかがめない収穫作業で作業性が大幅に向上し、土壌病害回避・かん水管理の改善にも効果があるため
- 高設栽培では電照による光補給効率が地植えより著しく高いため
- 高設栽培では果実の着果位置が高くなるほど大きく甘い果実になるため
解説高設栽培(ベンチ・ベッド上でのイチゴ栽培)は作業者が立ったまま収穫・管理できるため腰への負担が大幅に軽減されます。また土壌を使わないため連作による土壌病害を回避でき、かん水・施肥の管理も容易になります。高齢者・女性の就農しやすさにも貢献しています。