農薬・防除の栽培Q&A・解説

農薬・防除に関する知識をまとめました。このページでは、農薬・防除に関する全30問を、正解と解説つきの一問一答で整理しています。有機農業・環境保全など、栽培の現場や検定対策で役立つ知識を、読み物として確認できます。

Q1.農薬ラベルに記載されている「収穫前日数(安全日数)」とはどれですか。

  • 農薬散布を行ってよい最も遅い日程
  • 収穫当日に使用できる最大散布量
  • 最終散布から収穫までに必要な最短の日数
  • 農薬の効果が持続する最長日数

解説収穫前日数(PHI: Pre-Harvest Interval)は最終散布から収穫までに空けなければならない最短日数です。この期間に農薬成分が一定レベルまで分解・揮散し、残留農薬基準を満たすよう設定されています。

Q2.農薬の希釈倍数に関する説明として正しいのはどれですか。

  • 希釈倍数が小さいほど薄い濃度になる
  • 希釈倍数が大きいほど薄い濃度になる
  • 希釈倍数は散布量(リットル数)を表している
  • 希釈倍数は農薬の有効期限を示している

解説希釈倍数は「水に何倍に薄めるか」を示します。1,000倍希釈は農薬1に対し水999を加えることで、倍数が大きいほど濃度は薄くなります。ラベルの希釈倍数を守ることが残留・薬害防止の基本です。

Q3.殺菌剤と殺虫剤の使い分けについて正しいのはどれですか。

  • 殺菌剤は害虫を、殺虫剤は病原菌を対象とする
  • 殺菌剤は糸状菌・細菌等を、殺虫剤は害虫を対象とする
  • 殺菌剤と殺虫剤は同一で対象生物に違いはない
  • 殺虫剤はすべての病害虫に効果がある

解説殺菌剤は病原性の糸状菌・細菌・ウイルスなど植物病害の原因生物を対象とし、殺虫剤はアブラムシ・ハダニ・コナジラミなどの害虫を対象とします。対象に合った農薬を選ぶことが基本です。

Q4.農薬の抵抗性(耐性)獲得を防ぐためにとるべき対策として適切なのはどれですか。

  • 同じ有効成分の農薬を毎回高濃度で散布する
  • 作用機作(MoA)の異なる農薬をローテーション散布する
  • 1シーズンに1種類の農薬のみを連続使用する
  • 防除回数を増やしてより多く散布する

解説同じ作用機作の農薬を繰り返すと抵抗性個体が選抜されて増殖します。作用点が異なる農薬(グループ)をローテーションすることで、抵抗性の発達を遅らせることができます。

Q5.農薬散布時の安全のために着用すべき基本的な保護具はどれですか。

  • 軽装(Tシャツ・半ズボン)で迅速に作業する
  • 防護マスク・手袋・長袖・長ズボン・帽子を着用する
  • 肌を露出しやすい薄着で体への付着を確認しながら散布する
  • 汚れてもよい衣類のみ着用すれば十分

解説農薬散布時は農薬が皮膚・眼・口から体内に入らないよう、防護マスク・耐薬品性手袋・長袖長ズボン・帽子・ゴーグルを適切に着用します。作業後は手洗い・うがいも必要です。

Q6.IPM(総合的病害虫管理)の考え方として正しいのはどれですか。

  • 農薬を使わずに病害虫を完全に根絶する方針
  • 化学農薬のみを組み合わせて効率よく散布する方針
  • 耕種的・生物的・化学的防除を組み合わせて被害を許容水準以下に抑える方針
  • 農薬の使用量を年1回以下に限定する方針

解説IPMは農薬に頼りすぎず、圃場環境の整備・天敵利用・抵抗性品種の活用・化学農薬の適切使用などを組み合わせ、病害虫の被害を経済的被害許容水準(ETL)以下に抑える総合的な管理手法です。

Q7.農薬の飛散(ドリフト)を防ぐための対策として正しいのはどれですか。

  • 風の強い日に広範囲散布して効率化する
  • 低圧・大粒ノズルを使い無風〜微風時に散布する
  • 散布量を増やして風で流れる分を補う
  • 隣接農場に向けて散布し境界部分を重点防除する

解説農薬ドリフトは隣接圃場・水域・住宅地への飛散問題を引き起こします。低圧で粒径の大きいノズルを選び、無風〜微風の時間帯に散布することでドリフトリスクを低減できます。

Q8.植物成長調整剤(生長調節剤)の用途として正しいのはどれですか。

  • 土壌中の病原菌を直接殺菌する
  • 着果促進・品質向上・とう立ち抑制などに利用する
  • 雑草の発芽を物理的に抑制する
  • 害虫を忌避させる香り成分を放出する

解説植物成長調整剤はジベレリン・オーキシン・エチレンなど植物ホルモン類似の物質で、着果促進・単為結果・品質改善・徒長抑制・とう立ち防止などの目的で使用します。農薬登録の対象です。

Q9.農薬を使用できる作物・病害虫・使用量が定められている根拠となる法律はどれですか。

  • 食品衛生法のみで管理されている
  • 農薬取締法に基づき農薬登録制度で管理されている
  • 農業基本法により都道府県が独自に定めている
  • JAS法に基づく自主基準で管理されている

解説農薬は農薬取締法により、農薬登録を受けた作物・病害虫・使用量・回数・収穫前日数の範囲内でのみ使用できます。登録外の使用は違法となります。

Q10.天敵農薬(生物農薬)について正しく説明しているのはどれですか。

  • 天敵農薬は生物由来のため農薬登録の対象外
  • 害虫の天敵となる微生物・昆虫を利用した農薬で農薬登録が必要
  • 天敵農薬を使用すると病害には一切効果がない
  • 天敵農薬は化学農薬と全く同じ効果を持つ

解説天敵農薬は生物由来ですが、農薬取締法上の農薬として登録・使用基準の遵守が必要です。捕食性昆虫・微生物農薬(BT剤など)がIPMの重要な位置を占めています。

Q11.農薬の使用記録を残す主な目的はどれですか。

  • 農薬メーカーへの使用報告義務を果たすため
  • 使用履歴のトレーサビリティ確保と適正使用の証明のため
  • 収穫量と農薬費用を比較して費用対効果を計算するため
  • 天気予報と散布日程を記録して生産計画を立てるため

解説農薬使用記録の保管は農薬適正使用の証明であり、食の安全のトレーサビリティにも貢献します。GAP(農業生産工程管理)でも必須の管理項目とされています。

Q12.薬害(農薬による作物への悪影響)を引き起こしやすい条件はどれですか。

  • 希釈倍数を大きくして薄く散布した場合
  • 高温・強日射下での散布や規定濃度より濃い散布
  • 曇天の午前中に規定量を散布した場合
  • 散布前に十分な水やりを行った場合

解説薬害は規定より濃い散布、高温・強日射下での散布、乾燥した葉への散布などで起きやすいです。特に夏の高温期は薬害リスクが高く、早朝や夕方の散布が推奨されます。

Q13.農薬混用(複数農薬の混ぜ合わせ)に関する注意点として正しいのはどれですか。

  • すべての農薬は混用しても安全で問題ない
  • 混用適否は農薬ラベルや混用事例表で事前に確認する
  • 同じ剤型(乳剤同士)であれば自由に混用できる
  • 混用すると効果が弱まるため必ず単用で使用する

解説農薬の混用は効率的ですが、相性が悪い組み合わせでは薬害・沈殿・分離・効果の低下が起きることがあります。混用前にラベルや混用適否表で確認することが必須です。

Q14.農薬の残余液や洗浄水の処理として適切なのはどれですか。

  • 河川や水路にそのまま流して希釈する
  • 農薬ラベルの指示に従い適切に処理する
  • 庭に撒いて土に染みこませる
  • プラスチック袋に入れて可燃ごみとして廃棄する

解説農薬残余液や洗浄廃液を安易に河川や下水に流すことは水質汚染の原因となり法律違反になる場合があります。使い切るよう調製し、残った場合はラベルの指示に従い適切に処理します。

Q15.フェロモントラップを活用した害虫防除の主な目的はどれですか。

  • 害虫に直接的な殺虫効果を与える
  • 害虫の発生消長を把握して防除適期を判断する
  • 土壌中の害虫を地表に誘引して捕殺する
  • 天敵となる昆虫を圃場に誘引する

解説性フェロモントラップは成虫を誘引して発生時期・密度を把握するモニタリングツールです。防除のタイミングを見極めることで農薬の無駄な散布を減らしIPMの実践につながります。

Q16.有機JAS認証を取得した圃場で使用できる農薬の説明として正しいのはどれですか。

  • すべての登録農薬を通常通り使用できる
  • 有機JASで認められた特定の資材のみ使用可能
  • 農薬は一切使用できない
  • 地方自治体が独自に許可した農薬のみ使用できる

解説有機JAS認証圃場では化学合成農薬の使用は原則禁止です。ただし天敵農薬・BT剤・銅剤など有機JAS規格で許容された資材は使用できる場合があります。

Q17.農薬散布後に雨が降った場合の対応として正しいのはどれですか。

  • 雨による希釈効果で作物への残留が減るため追加散布は不要
  • 散布後の降雨で薬剤が流れた場合は乾燥後に再散布を検討する
  • 雨が降っても農薬効果は維持されるため何もしない
  • 雨が降るほど農薬の浸透性が高まり効果が増す

解説散布直後の降雨は薬剤を洗い流してしまいます。使用した農薬の展着性や降雨後の再散布可否はラベルで確認し、必要に応じて散布のやり直しを判断します。

Q18.農薬の保管で最も重要な原則はどれですか。

  • 日当たりの良い場所に置いて農薬の変質を防ぐ
  • 施錠できる専用倉庫に他の物と分けて保管する
  • 冷蔵庫内に食品と一緒に保管する
  • 使用後すぐに庭に埋めて処分する

解説農薬は農薬取締法に基づき、施錠できる専用の保管庫に保管し、食品・飼料・子供の手が届く場所から離す必要があります。盗難・誤飲・環境汚染防止のために適切な保管が義務づけられています。

Q19.除草剤の選択性について正しく説明しているのはどれですか。

  • 選択性除草剤はすべての植物を枯らす
  • 選択性除草剤は特定の植物(雑草)にのみ効果があり作物には影響が少ない
  • 非選択性除草剤は雑草のみを枯らして作物を守る
  • 除草剤に選択性の差はなくすべて同じ作用を持つ

解説選択性除草剤は対象雑草にのみ効果を発揮し、作物には影響が少ない特性を持ちます。一方、非選択性除草剤は当たった植物を広く枯らすため、使用場所の選択に注意が必要です。

Q20.農薬の「予防散布」と「治療散布」の違いとして正しいのはどれですか。

  • 予防散布は少量、治療散布は多量の農薬を使う
  • 予防散布は発病前に病害の侵入を防ぎ、治療散布は発病後に病原菌を排除する
  • 予防散布は害虫に、治療散布は病害に使う区分
  • 予防散布は化学農薬で、治療散布は天敵農薬を使う

解説予防散布は病害虫の発生前または初期に行い感染・加害を未然に防ぎます。治療散布は感染後に病原菌の拡大を止める目的で使いますが、多くの病害は発病前の予防が効果的です。

Q21.農薬の「展着剤」を加える主な目的はどれですか。

  • 農薬の有効期間を延長する
  • 葉面への濡れ広がりと付着性を高める
  • 農薬の希釈倍数を自動的に調整する
  • 散布後の臭いを消して周辺環境への影響を減らす

解説展着剤は表面張力を下げて農薬液が葉面に均一に広がりやすくし、付着性・浸透性を高める補助剤です。撥水性の強い葉やろう物質を多く含む葉面への農薬効果を向上させます。

Q22.農薬散布の「ローボリューム(少量散布)」と従来の多量散布の主な違いはどれですか。

  • ローボリュームは濃度を薄くして大量散布する方法
  • ローボリュームは少量の水で高濃度に調製した薬液を散布して作業効率を高める方法
  • ローボリュームはドローンのみで実施できる散布方式
  • ローボリュームは農薬の有効期限が短い場合に使う緊急散布の方式

解説ローボリューム(少量散布)は少量の水に農薬を高濃度で溶かして散布する方法です。水の量が減るため運搬・作業が効率化でき、環境への負荷低減にも貢献します。ラベルで少量散布の可否・倍率を確認します。

Q23.農薬の「系統(MoA:作用機作)」が重要視される主な理由はどれですか。

  • 系統が同じ農薬ほど安全性が高く残留が少ない
  • 同系統の農薬の連続使用は抵抗性を発達させやすいため、ローテーションの指針になる
  • 系統を統一することで散布作業の効率が上がる
  • 系統が一致しないと農薬の混用はすべて禁止されている

解説作用機作(MoA)が同じ農薬を繰り返すと、生き残った耐性個体が増殖して抵抗性が発達します。異なるMoAをローテーションすることで抵抗性の発達を遅らせることができます。IRAC(殺虫剤)やFRAC(殺菌剤)の番号がMoAを示します。

Q24.土壌くん蒸剤(土壌消毒剤)使用後に行う「ガス抜き」の主な目的はどれですか。

  • 薬剤の効果を早く終了させるため
  • 残留ガスを圃場外へ放散させて作物根への薬害を防ぐため
  • 土壌温度を下げて病原菌が再増殖するのを抑えるため
  • ガスが揮散した後に農薬の成分が地下水に流れるのを防ぐため

解説土壌くん蒸剤は揮発性の高い成分を使って土壌中の病害虫を殺しますが、作付け前に残留ガスを十分に揮散(ガス抜き)しないと作物根に薬害が生じます。十分な換気・期間を確保することが重要です。

Q25.農薬の「乳剤」「水和剤」「フロアブル(水性懸濁剤)」の使い方として正しいのはどれですか。

  • 乳剤は水に溶かさずそのまま散布する
  • いずれも水で希釈して使用するが、剤型により乳化・分散の仕方が異なる
  • 水和剤は加熱溶解が必要で、フロアブルは凍結させてから使用する
  • 乳剤とフロアブルは必ず混合して使用するルールがある

解説乳剤・水和剤・フロアブルはいずれも水で希釈して散布しますが、溶解・分散の方法が異なります。乳剤は有機溶剤に溶かした液体、水和剤は粉末状(水中に分散)、フロアブルは固体成分を水に懸濁させた液体です。

Q26.農薬の「総使用回数」の制限が設けられている主な理由はどれですか。

  • 農薬メーカーの販売量を管理するため
  • 1作期内の残留農薬が基準値を超えないようにするため
  • 農薬散布の作業員の疲労を防ぐため
  • 農薬の有効期間が過ぎると効果がなくなるため

解説総使用回数は農薬成分が収穫物に過剰に残留しないよう、1作期内の散布回数の上限を定めています。回数を守ることで消費者の安全を確保します。ラベルに記載された使用回数を必ず守る必要があります。

Q27.殺虫剤の「浸透移行性」とはどのような性質ですか。

  • 農薬が土壌から地下水へ浸透して水系に広がる性質
  • 農薬成分が植物体内に吸収されて茎葉・果実全体に移行する性質
  • 農薬が散布後に大気中に揮散して広範囲に広がる性質
  • 農薬が葉の表面を覆って雨で流れにくくなる性質

解説浸透移行性農薬は根や葉から吸収されて植物体内を移動し、葉の裏や新芽など農薬が直接当たらない部分の害虫にも効果を発揮します。葉を吸汁するアブラムシやコナジラミへの効果が高い一方、受粉昆虫への影響にも注意が必要です。

Q28.農薬散布における「適期防除」の意味として正しいのはどれですか。

  • 農薬の効果が最も長続きする季節に散布すること
  • 病害虫の発生・増殖が始まる前の最も効果的なタイミングで防除すること
  • 価格が最も安い農薬を選んで効率的に散布すること
  • 同じ農薬を1年を通じて一定間隔で散布し続けること

解説適期防除とは病害虫の発生消長を把握し、被害が軽微なうちに(またはその直前に)防除することです。早期に対処するほど少ない農薬量で高い効果が得られ、抵抗性の発達リスクも低くなります。

Q29.農薬の「再侵入期間(残効期間)」を考慮した散布計画の立て方として正しいのはどれですか。

  • 残効が長い農薬は散布回数を増やしてより強い効果を得る
  • 残効期間内は新たな感染・加害から守られるため次の散布時期を判断する目安にする
  • 残効期間は作物の種類に関係なく一律7日間と決まっている
  • 残効が切れる前に同じ農薬を連続散布して防除効果を維持する

解説農薬の残効期間は製品・散布条件・気象によって異なります。残効が切れるタイミングを見極めて次回の散布時期を決定することで、無駄な散布を減らしつつ防除効果を維持できます。また同一農薬の連続使用は抵抗性を招くため注意が必要です。

Q30.防虫ネット(物理的防除)を活用する主な目的はどれですか。

  • 害虫を薬剤で殺滅するため
  • 害虫の侵入を物理的に防いで農薬散布の回数を減らすため
  • ネットで日光を遮って害虫の繁殖に必要な温度を下げるため
  • ネット越しに害虫に視覚的なストレスを与えて忌避させるため

解説防虫ネットは適切な目合いのネットで作物を覆い、成虫(モンシロチョウ・コナガ・アブラムシなど)の飛来・産卵を物理的に防ぎます。農薬を使わずに防除できるためIPMの重要な手段であり、農薬散布回数の低減に貢献します。